【行政書士が解説】改正行政書士法が施行。何が変わった?

令和8年(2026年)1月1日、改正行政書士法が施行となりました。

今回の改正は行政書士業界のみならず、関連する業界に大きな影響を及ぼすような大きな改正となります。

特に注目すべきは、

【「目的規定」から「使命規定」への変更】

【デジタル対応を含む「職責」の新設】

【「業務制限」の明確化】

以上の3点です。

この記事を書いた人

矢島 拓也  行政書士

Takuya YAJIMA  /  Administrative scrivener

 「第一義」の志と「競業より協業、競争より共創」を合言葉に、ご依頼者様に貢献すべく精力的に活動する許認可マイスターであり、スノーボード歴25年越えの「スノーボーダー行政書士」。


令和8年1月1日施行 改正行政書士法の主な改正点

まずは令和8年1月1日施行、改正行政書士法の主な改正点について法律原文を見てみましょう。

第一条 行政書士の使命

第一条 行政書士は、その業務を通じて、行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もつて国民の権利利益の実現に資することを使命とする。

第一条の二 職責

第一条の二 行政書士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。
 行政書士は、その業務を行うに当たつては、デジタル社会の進展を踏まえ、情報通信技術の活用その他の取組を通じて、国民の利便の向上及び当該業務の改善進歩を図るよう努めなければならない。

第一条の三 業務

第一条の三 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
 行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。

第十九条 業務の制限

第十九条 行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。

第二十三条の三 両罰規定

第二十三条の三 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第二十一条の二、第二十二条の四、第二十三条第二項又は前条の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

それでは、具体的に中身を見ていきます。

何が変わったの?

①「 目的規定」から「使命規定」への変更

第一条の「目的」が「行政書士の使命」に変更されました。

以前の第一条は「この法律は・・・」で始まり「・・・を目的とする。」で終わる、いわゆる「この法律が何で存在するのか?」という書き方でした。

改正後は使命規定となり、行政書士の社会的意義や倫理的義務がより直接的に示されました。

つまり、「行政手続を円滑に(=スムーズに)進めることで皆様の生活を便利にし、それにより皆様の権利を守っていくことが、行政書士の使命であり、社会的意義であり、倫理的義務である。」とストレートに明記されたことになります。

ちなみに・・・弊所ホームページの取扱業務には、冒頭で「行政書士法 第一条」を記載しております。今回の改正により改正後の条文に変更しましたので、興味のある方はぜひご覧くださいませ。

② 職責規定の追加

以前の条文では業務規程だった第一条の二に、新しい条文で「職責規定」が挿入されました。

注目は、士業法で初めて「デジタル社会への対応」の努力義務が規定されたことで、行政手続のオンライン化が進む中で、デジタルに不慣れな高齢者や障害者、外国人が取り残されないようサポートすることが、行政書士の重要な職責として位置づけられました。

また、国家資格者である士業の一端を担う者として、常に品位を保ち、公正で誠実に仕事をすることも定められています。

 

③ 特定行政書士の業務範囲拡大

今まで特定行政書士は、行政書士が作成した書類に関する不服申立て(行政への異議申し立て)しか扱えませんでした。

特定行政書士とは、平成26年の改正時に新設された制度で、特定行政書士の付記を得る(=研修を受けて考査に合格する)ことで「行政書士が作成した」書類に関する許認可等の不服申立代理ができるようになりました。

しかし「行政書士が作成した」では、「そもそも行政書士が最初から関与しているのに、望まない結果(不許可など)となり不服を申し立てる」ということになり、よろしくないのでは?という意見が以前から一定数ありました。


今回の改正で、行政書士に依頼せず申請者本人が作成し提出した許認可等の申請に関する不服申し立てについても特定行政書士が代理することができるようになりました。

今後は特定行政書士の付記を得ることで、お客様が自ら行った申請のフォローだけでなく行政の不作為(=申請に対して許可や不許可など何らかの処分をしてくれないこと)に物申すなどの役割が増えることとなります。

④非行政書士行為の明確化

報酬を得て作成する官公署向けの書類について、行政書士以外の者が有償で作成する、いわゆる非行政書士行為が明確に禁止されました。

「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が追加されたことで、これまで「業として」の解釈として行われてきたものを明確に表現した、という改正内容となります。

「名目を問わず」とあるように、「それって事実上の書類作成報酬ってことだよね」と解釈できる報酬は明確に禁止となりました。

たとえば、補助金支援などで民間の経営コンサルタント等などが、「書類作成費用としては無償(タダ)で書類を作成」して、「コンサル報酬を貰う」「成功報酬を貰う」などは、明確に禁止されることとなります。

注)補助金支援が違法ということではありません。補助金支援自体は民間の経営コンサルタント等が行うことに問題はありません。行政書士法で行政書士の業務とされているのは「官公署に提出する書類の作成」です。


今回「いかなる名目を問わず」という文言が追加されたことで、無料で書類作成をしているのであっても、非行政書士行為と判断される可能性が高くなります。

⑤ 両罰規定の整備

行政書士法違反者が会社に所属していた場合、違反した本人だけでなく、所属する会社にも罰金が科されるようになりました。

「行政書士法違反の罰則を両罰規定化する」というのは、度々見られる深刻な非行政書士行為に対する牽制の意味合いが強いと思われます。

  • ④にも書きましたが、行政書士ではない者が「コンサルタント料」「手数料」「会費」などの名目で対価を受け取り、補助金申請等の書類作成等を行う事例が横行していること
  • 「書類作成は無料」といいながら、他の費用(車両購入代金やコンサル料など)に書類作成費用を含め、実質的に書類作成費用としての報酬を得る行為が横行していること

上記のような非行政書士行為について、明確に禁止する必要がありました。

これにより、これまでいわゆる「グレーゾーン」とされ、慣行的に非行政書士行為を続けてきたと思われる業界に極めて大きな影響を与えることとなります。

以下は一例です。

  • 自動車販売店や整備業者等で、お客様へのサービスや車両購入代金に含める形で「自動車登録」や「車庫証明」の書類作成代行を行っている場合、改正後は「報酬を得ている」とみなされ、行政書士法違反となる可能性が高くなります。
  • 登録支援機関(技能実習・特定技能)で、 在留資格申請書類の作成を「支援費」などの名目で行うことは、上記同様「報酬を得ている」とみなされ、行政書士法違反となる可能性が高くなります。
  • ④にも記載した通り、経営コンサルタント等で、 補助金申請の事業計画書作成支援において官公署に提出する書類の作成を名目問わず有償で行うことは、行政書士法違反となる可能性が高くなります。

最後に

改正行政書士法が施行され、各事業者様は法令遵守体制の再構築が急務となります。

具体的には

  •  補助金支援やコンサルティング等と行政書士の独占業務である「官公署へ提出する書類の作成」を明確に分け、お客様との契約を見直すこと
  • 官公署に提出する書類の作成は行政書士へ依頼する体制を整えること
  • 担当者が「良かれと思って」安易に官公署へ提出する書類を作成しないよう、改正行政書士法の「両罰規定(本人だけでなく会社も処罰される)」のリスクを社内で周知すること
  • 防衛策として、「官公署に提出する書類の作成」を業務から除外して契約していることや行政書士が適正に関与しているということを客観的に証明できる形で残し、説明できるようにすること

以上のことが挙げられます。

行政書士法違反には、場合によって厳しい罰則(1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)が伴います。

できるだけ早く運営体制の見直しを行い、適正・適法な体制を整えましょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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