※旅館業法による旅館業営業許可については以下をご覧ください。

ここ数年、インターネットのサイト等で空き家などを宿泊用に提供する、いわゆる『民泊』が急増しました。

『民泊』についての法令上の明確な定義はありませんが、住宅(戸建住宅やマンションなどの共同住宅等)の全部又は一部を活用して、旅行者等に宿泊サービスを提供することを指して『民泊』ということが一般的です。

新型コロナウイルス感染症の影響により観光需要はいったん減少したものの、状況がある程度落ち着きつつある今、訪日外国人観光客の多様なニーズや、少子高齢化社会により増加している『空き家の有効活用』といった地域活性化の観点から、いわゆる民泊に対する期待が高まっています。

民泊については、感染症の感染拡大防止や、地域住民とのトラブル防止のためのルールづくり以前に、旅館業法の許可が必要な旅館業に該当するにもかかわらず無許可で実施されているものが多数存在し、その対応の必要性が生じています。

そのため、民泊サービスについて一定のルールの下、その健全な普及を図るため、住宅宿泊事業法が施行されました。(平成30年6月15日)

住宅宿泊事業とは?

住宅宿泊事業(民泊)とは、『宿泊者から宿泊料を得て、自宅や別荘等住宅の全部又は一部に宿泊させること』を指します。

人を宿泊させる日数が年間180日を超える場合は、旅館業法に基づく営業許可の取得が必要になりますが、人を宿泊させる日数が年間180日を超えないなど一定の要件を満たす場合は、旅館業法の許可を受けずに住宅宿泊事業法に基づく届出による民泊の提供が可能となります。

民泊を始める前に確認すること

①民泊を行う予定の住宅が、住宅宿泊事業法の『住宅』に該当するか?

住宅宿泊事業法における『住宅』とは、次の2つの要件を満たす家屋です。(住宅宿泊事業法第2条第1項関係)

1.台所、浴室、便所、洗面設備があること

  • 台所、浴室、便所、洗面設備は必ずしも1棟の建物内に設けられている必要はありません。例えば、浴室のない「離れ」について、浴室のある同一敷地内の「母屋」と併せて一つの『住宅』として届け出る場合が該当します。
  • これらの設備は独立しているものでなくてもよく、例えば3点ユニットバスのように、一つの設備が複数の機能(浴室、便所、洗面設備)を有している場合、それぞれの設備があるとみなすことができます。また、これらの設備は一般的に求められる機能があれば足りるとされています。例えば浴室について浴槽がない場合でもシャワーがあれば足り、便所については和式・洋式等の種類は問いません。

2.下記のいずれかに当てはまり、かつ、他の事業(※人を宿泊させるもの又は人を入居させるものを除く)に使われていないこと。

  • 現に人の生活の本拠として使用されている家屋(特定の者の生活が継続して営まれている家屋のこと)
  • 入居者の募集が行われている家屋(住宅宿泊事業を行っている間、分譲(売却)又は賃貸の形態で、入居者の募集が行われている家屋のこと)
  • 随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋(家屋の所有者等に使用の権限があり、少なくとも年1回以上は使用しているものの生活の本拠としていない家屋のこと)

【随時居住の用に供されている家屋の具体例】

  • 別荘等季節に応じて年数回程度利用している家屋
  • 休日のみ生活しているセカンドハウス
  • 転勤により一時的に生活の本拠を移しているものの、将来的に再度居住の用に供するために所有している空き家
  • 相続により所有しているが、現在は常時居住しておらず、将来的に居住の用に供することを予定している空き家
  • 生活の本拠ではないが、別宅として使用している古民家

※『他の事業(人を宿泊させるもの又は人を入居させるものを除く)』とは、例えば飲食店の営業や各種学習塾などがあります。住宅宿泊事業の届出住宅にはこれら他の事業を営む部屋や設備を含めることはできません。

②年間180日を超えて宿泊させるか?

住宅宿泊事業法では年間180日を超えて人を宿泊させることはできません。

年間180日を超えて人を宿泊させる場合、旅館業法の許可が必要です。(旅館業法許可についてはこちらへ

③宿泊者に食事を提供するか?

宿泊者への食事提供は、食品衛生法の許可(食品営業許可のうち、飲食店営業許可)が必要です。(食品営業許可についてはこちらへ

また、宿泊者以外の者にも食事を提供する場合、住宅宿泊事業法の『住宅』に該当しない場合があります。(上記①の2を参照)

④特定施設の届出はいる?いらない?

住宅宿泊事業の届出をする住宅が、水質汚濁防止法等の『特定施設』に該当することがあります。

⑤宿泊者へ温泉の提供はある?

宿泊者に温泉を提供する場合は、温泉法による許可が必要です。

また、入湯税等の対象となる場合があります。

⑥ゴミの処理方法の確認は?

住宅宿泊事業(民泊)に伴い生じた廃棄物は、事業系廃棄物に該当します。

⑦消防法令に適合しているか?

住宅宿泊事業の届出時に『消防法令適合通知書』を添付します。

届出住宅の所在地を所管する消防本部に交付の申請をします。

住宅宿泊事業者として、責任を持って運営しましょう

上記は住宅宿泊事業の届出を検討する時に、まず最低限把握しておきたい事項です。

届出を行う際にはご自身の事業スタイルによって条件を詳細まで確認してください。 

住宅宿泊事業の届出は、合法に(非合法は論外です)民泊事業を行うための他の手段である旅館業法や特区民泊に比べれば、届出は比較的易しいものではあります。

しかし、住宅宿泊事業法は健全な民泊サービスの普及を図るために制定されていますので、住宅宿泊事業に関わる者に対して相応の責任と義務が課せされていることは忘れてはなりません。

民泊事業は住宅宿泊事業法だけでなく、様々な法律により規制され、関係役所も多岐にわたります。

オープンされる前の忙しい時期に、消防などの立会に時間を取らなければなりませんし、さらに必要書類(申請書類、図面、誓約書等)も、役所で取得し、慣れない申請書類を作成する必要があります。

また、ご自身で頻繁に許可を取得するようなものでもありませんので、たった1回の届出のためだけに様々な法令を調べ、時間を作ることは非効率的です。

これらの面倒を当事務所が届出までスピーディに対応し、お客様は開業準備に専念する事ができます。

事業者の皆様の代理人として、日ごろから官公署への申請や折衝を行っている行政書士だからこそのノウハウを元に、旅館業許可や民泊届出に関する支援をご提供いたします。

適法での申請・届出についてお悩みなら、ぜひ当事務所へご相談ください。